星音における料理哲学

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真に美味しい一皿を完成させるために

料理とは、理(ことわり)を料(はかる)と書きます。
それは料理が理に適ったものでなければならないことを意味しています。
食材へのアプローチ、それぞれの食材がもつ「うまみ」の組み合わせ、相手を慮る心。
こうした一つひとつのプロセスや料理人としての姿勢に少しでも理に適わないことがあれば、真に美味しい一皿は完成しません。
料理という言葉には実に深い意味が込められており、料理人が知識と経験のすべてをぶつけて料理と向き合わなければならない所以がここにあります。

食材へのアプローチ

じっくり吟味して選んだ食材、その一つひとつにどうアプローチしていくのか。
その模索は食材を知ることから始まります。
どこで、どのように、誰がどんな想いをもって育んでいるのか…。
野菜、山菜、ハーブ、果物、魚介、食肉、それぞれの素材が潜在的に秘めている力を最大限に引き出すには、高い志と技術をもった生産者とつながり、命が生み出された背景を学ばなければなりません。
そのために欠かせないのは、自身の足で全国の産地を訪ね歩くこと。
料理人は、食材を生み出す土壌や育てられた自然環境を自身のその目で直に確かめることで、生きた命としての食材へ合理的にアプローチする方法を導き出すことができるのです。

道理を合わせ食材の個性を引きだす

料理には、素材がもともと持って生まれた個性を活かす工夫が求められます。
その食材が本来もつ魅力が損なわれることのないよう、互いが個々の持ち味を高めあうような組み合わせを考えなければいけません。
食材の組み合わせから生まれる絶妙な味のバランス、風味や香り、そして食感。
そのすべてを実現させるために必要なことは、ものの道理を合わせること。
料理の組み合わせや相性を考えるときには、食材自体が潜在的にもつポテンシャルを紐解き、その上で食材のうまみを最大限に引き出すための調理プロセスを構築します。

そこに、命に対する敬意と感謝の念が込めて。
命をいただく以上、「食材を無駄にしない」努力を怠るべきではありません。
どう調理すれば命が生かされるのか、試行錯誤の上でその術を導き出す。
そうして考え出された料理の工程や作業にはそれぞれに最適解があるため、一つでもボタンのかけあわせを間違えれば、ゲストを魅了する料理が完成することはないのです。

料理人は「食体験の創造主」

理に適う真の一皿とは、食べる人の嗜好を叶えるものというだけでなく、心身を健やかにするものでもあるべき。
私たちはそうした考えの下、料理を提供しています。

星音の施設内にあるダイニング「香音」は、カウンターと個室の両方を備えています。
どちらの席に座られても、料理人や料理を提供するスタッフが、料理を口にされるお客様と会話を交わします。
メニューの紹介をしたり、料理の感想を聞いたりはもちろんですが、旅の目的、日々の暮らしの様子、ご家族のことなど、その内容は料理にとどまることはありません。
実はこうしたコミュニケーションも料理には欠かせないエッセンス。
何気ない会話から、ゲストの普段の食生活、直前に食べたもの、お腹の空き具合を知り、食べ終わった直後、そして数時間経た後に生まれる食後の余韻などを想定して、提供する料理の内容や量を調整することができるのです。

食材へのアプローチ、うまみの組み合わせ、調理プロセスの構築、そうしたものに加えて、忘れてならないのは、料理人は「食体験の創造主」であるということです。
今までにない味わいの感覚や舌が記憶する食の体験を提供したいという想いは、料理人の本能ともいえるもの。
持てる技術と知識に、食材に対する敬意、ゲストを思いやる気持ち、もてなしの心といったエッセンスを加え、革新的なプレゼンテーションで唯一無二の食体験へと誘う一皿に磨き上げていくのです。